今がどれほど幸せなのか。一生忘れられない味です

　もうすぐ映画が公開になるので、応援してくれる方たちや友だちに「やっと観てもらえる！」と思っています。ＳＮＳなどを通じて感想を聞けるのがすごくうれしいんです。僕は作品などを観てあまり泣いたりしないのですが、『ラーゲリ～』を試写で観たときに大号泣して。周りの方にバレないように服で涙をふいたんですけど（笑）、それほど衝撃を受けました。家族や大切な人たちと会えないつらさも感じましたけど、感動も大きかったです。

『ラーゲリ～』の撮影をしたときは16歳で、自分がこの年齢で戦争というものをきちんと受け止めて、ちゃんと理解して演じることができるのか、自分ひとりだけ経験不足で場違いなんじゃないかという不安があったんです。でも、僕と同じように後藤実という役柄も、シベリアに抑留される兵士のなかではいちばん年下だったので、それが役に直結してみなさんといい関係ができたのかなと思います。休憩時間には、世間話の輪にも入れていただいて、桐谷健太さんから「今の高校生ってどんな感じなの？」って聞かれたり、みなさんの話を聞かせていただいたり。すごく楽しかったです。

　大変だったのは、丸太運びなど、本当に肉体労働をしたシーン。木を伐採したときは瀬々敬久監督に「力強くていいね」って言っていただいて。本当は疲れていたけど、ほめてもらえたことががうれしくて、「はい！」って気合を入れて頑張ったら、次の日にすごい筋肉痛になりました（笑）。現場で、肉体労働など大変なシーンが続いても松坂桃李さんは疲れている素振りを絶対に見せないんです。その姿を見て、「僕も頑張ろう！」という気持ちになりました。

　印象深いのは劇中で配布される黒パンがおいしくなかったことです（笑）。堅くて酸っぱくて、苦いんです。それは当時の経験談から再現されたと聞きました。あの一食で肉体労働をして一日を過ごすなんて、今がどれほど幸せなのか。これからもときどき思い出そうと思った貴重な体験でした。一生、忘れられない味です。