間違いなく僕のなかの青春そのものでした

——山時さん演じる与野草太はどんな人物でしょうか。また、演じる際に意識したことはありますか。

草太は、かるたに真摯に向きあいながらも、チームのムードメーカーとしてコメディ要素も担うキャラクターです。そのため、見ている方に伝わるような「見せる芝居」を意識して、単純に感情だけで動くんじゃなくて、「こう思ってもらえたらいいな」とか「笑ってくれたらいいな」という思いで演じました。

——かるたの練習についてはいかがでしたか？

かるたの練習は、基本の動きを何度も繰り返しました。登場人物それぞれで得意な型や、迫力ある取り方に個性が出るんですが、僕が演じる草太は、先輩が引退してひとりで部を引っ張っているという設定があります。だからこそ、“かるたが本当に好きで、基本を大事にしている”というキャラクター像が伝わるように、速さも意識しながら、地道な練習を大切にしました。

——全体での練習もありましたか？

はい、共演者のみなさんとの合同練習もありました。撮影が始まる半年くらい前から、かるたの先生に指導していただいて、「右！」って言われたらすぐにそちら側に体を反応させるような、基礎的なトレーニングを重ねていきました。撮影中は、僕たちの間で「ミニゲーム」と呼んでいた練習方法もあって。時間は5〜6分と短いのですが、集中力も必要で、みんなで本気になって楽しんでいました。

——演じた役と自分の共通点や違いは？

草太は、人を楽しませることが好きな“エンターテイナー気質”のあるキャラクターで、物語のなかでもちょっと笑えるようなシーンを担当することが多いんです。人の前に立って、周りをまとめていくようなタイプでもあります。僕自身も高校ではバスケ部のキャプテンをやっていて、人を笑わせるのが好きだったので、そういうところは草太と似ているなと思います。でも、草太は本当にいい子でとにかくピュアで、誰かのために一生懸命になれる人です。反抗心とかがまったくなくて、「こんな純粋な子、いる!?」と思うくらい（笑）。そういうところは、自分とはちょっと違うかもしれません。

——印象的だった共演者は？

「八雲力」役の坂元愛登くんです。愛登は、実はちょっと自分と似てるなって思う部分がありました。ちょっとした、わかりやすいウソをついちゃったりするけど、そこが逆にかわいらしいっていうか（笑）。愛登みたいな子が後輩にいたら、「何かおごってあげたくなるな〜」って思っちゃうと思います。役作りもすごくていねいで、現場でも本当に魅力的な存在でした。

——現場の雰囲気はいかがでしたか？

現場は本当に学校みたいでした。スタッフさんたちが最初から笑いの絶えない雰囲気を作ってくださって、監督やスタッフさん含め、みんなが青春を味わえる空間にしてくれたんです。みんなで集まってごはんを食べたりしていました。スタッフさんが先生のようなときもあり、「今しかない現場だな」と思いました。

——現場での思い出はありますか？

梅園のメンバーでカードゲームのボックスを割り勘で買って、みんなで開封するという遊びをしました。キラキラのレアカードが出ても、査定額は350円とかで（笑）。その様子を全部動画に撮っていて、今でも移動中などに観て笑ってます。みんな本当にかわいくて、あの時間は忘れられないです。あと、プロデューサーさんが使いきりのカメラを配ってくれて、それを現像して写真ファイルにまとめてくれて、みんなで「ああ、これいいね！」って見たり。あれは完全に青春でした。

——最近誕生日を迎えて20歳になりましたね。

共演者のみなさんに祝っていただきました。当日ではなかったと思いますが、みんなで一緒にごはんを食べに行ったり、お酒を飲んだりする機会もあって。そういう時間もうれしかったです。

——20歳になって思うことはありますか？

最近は「失敗も大事な経験」と思うようになりました。大人になるにつれて、いろんなことを深く考えるようになるし、つまずいた経験があとから自分の成長につながればいいなと思っています。最近は特に、芝居に対してすごく高い理想を持つようになって、そのぶん自分に自信がなくなることもあるんです。でも、それも含めて経験だと思えるようになりました。20歳を迎えて、これからもいろんなことを吸収して、それをお芝居に活かしていけたらいいなと思っています。

——『ちはやふる』は部活の青春を描いていますが、高校時代の青春の思い出も役作りにいかされましたか？

高校時代の思い出も役作りにはすごくいかされたと思います。高校時代はバスケ部のキャプテンをやっていて、勝ちたい気持ちが強かったから、後輩や同級生にも結構厳しくしていたんです。嫌われても仕方ないって思っていました。でも、引退試合で負けたあと、同級生が「聡真がキャプテンで本当によかった」って言ってくれて…。その瞬間、みんなで泣きながらハグをして。「本当にドラマみたいなことってあるんだ」と感じました。あの時間は、間違いなく僕のなかの青春そのものでした。

——難しいと思う演技は何ですか？

泣く演技です。最近は、「涙活」って言うんですかね、感情を動かす練習として、結婚式のスピーチとかをYouTubeで観たりしてるんです。すごく泣けます…。泣く演技って、魅せる芝居としてすごく大事だと思うので、もっと自然にできるようになりたいと思っています。

——最後に、このドラマの魅力を教えてください。

大人から子どもまで青春を感じられるところが、この作品の一番の魅力だと思います。僕もコロナ禍で修学旅行に行けなかったりして、青春に対する憧れみたいな気持ちが強かったんです。きっと僕だけじゃなくて、子どもでも大人でも感じている方は多いんじゃないかなって。この作品を観て、「自分も青春したなあ！」と思ってもらえたら、それが何よりうれしいです。